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志布志市内で活躍する農業者を紹介します。


吉川 拓弥38歳(令和7年9月現在)、水稲を中心とした複合経営をしています。
早期米を60ヘクタール、普通期米を6ヘクタール栽培しており、その他そば35ヘクタール、甘藷17ヘクタール、人参16ヘクタール、大根13ヘクタールなどの露地野菜も栽培しています。
志布志市出身で、鹿児島県立農業大学校を卒業すると同時に、親元(株式会社吉川農産)に就農しました。

幼い頃より農業が身近であったことから、農業について学べる鹿児島県立末吉高等学校(現在の鹿児島県立曽於高等学校)に入学しました。
大学に進学する頃には、親元で就農し、米農家になるという目標が定まっていたので、水稲栽培について腰を据えて学ぶことができました。

担当を分けて作付け計画を立てており、私は主に水稲と人参を担当しています。
また、弟は水稲と大根を、父は甘藷を、妻は事務を担当し、家族で協力し合いながら仕事に励んでいます。
弟は私と同時期に就農しており、3年ほど前には兄弟で農産物検査員の資格を取得し、自社で等級検査にも取り組んでいます。

父は、仕事に関して多くを語る性格ではありませんでしたが、分からないことやトラブルには直ぐに対応してくれて、その背中からは多くのことを学ぶことができました。
特に、お客様を大事にすることは、厳しく教えられ、信頼を得ることが、自分たちの生活の助けとなるので、引き続き、取引先や地元の人々との関係は大切にしていきたいと思います。
将来的には、私が吉川農産を継承する予定になっています。
現在は、ほぼ玄米で取引していますが、白米での販売やふるさと納税の返礼品とするなど、インターネットを利用して、販路拡大を考えています。

当社では水田や露地栽培で、多品目を生産しており、気候変動により毎年同じようにうまくいくとは限りません。
ですが、毎年様々な状況で経験を積み、苦労して作った作物が、全国や地域の方に食べてもらえることに、喜びとやりがいを感じています。
これから農業を始められる方たちも、同じようにやりがいを感じ、農家でしか味わえない喜びを知って欲しいと思います。


令和になるまでの長い期間で、需要の長期的な減少等を原因に、日本の米の価格は下がり続けていました。
令和5年産以降には、インバウンド、日本食ブームなどによる供給量不足や生産コストの増加により、急激に価格高騰し、米を取り巻く情勢に大きな変化が見られました。
インタビューの中で、拓弥さんは「農家で育ったことが、特別な事だと感じたことはなかった」と語り、「今だからこそ、自分で作った米や野菜は特別美味しく感じる」としみじみ話していました。
米は日本人にとって、主食以上の存在であり、文化や歴史とも深く結びついています。
私が地域おこし協力隊として活動を始めてから、農家以外にも多くの市民の方が、畑だけでなく田も所有しており、先祖代々の田を守る為、また生活の一部として米作りをしている様子を目にしてきました。
近年の情勢変化を受け、日本の農業と食文化継承の活動がSNS等で活発に発信され、若年層の間でも関心が高まりつつあることから、次世代への日本の農業と食文化の継承が期待されています。
そのためには、農家ならではのやりがいや魅力を若い世代に積極的に発信し、実際に農業に触れる機会を提供することが重要な鍵となります。